19. またあした

 僕は中村一義の口から『OZ』の構想を聴いた時に、直感的に、ビートルズの『アビイ・ロード』のような創りになるのでは?と思った。決して4人の個がバラバラになって渾沌として成立した『ホワイト・アルバム』のようになるのではなく、4人の個性が素晴らしく高みに登り詰めたミュージシャンとして成長した故に産み出されたアルバムとして。その直感が的中したかどうなのかわからないが、『OZ』発売前に『OZ』収録曲のタイトルを目にした瞬間、「またあした」「バハハイ」というタイトルが目に飛び込んで来てしまったが故に、さらに一層『アビイ・ロード』というアルバムとの極似性を感じずにいられなかった。「Carry That Weight」「The End」と繋がる『アビイ・ロード』のあの雰囲気と…。あのアルバムの裏に秘められたものと…。
 それと、中村一義の口からこのような言葉もこぼれだした。「これは僕がデビューした時に創った曲なんです」と。「約10年前にデビューするために色んなレコード会社に送るデモテープに収録していた曲なんです」と。これには驚愕させられた。個人的に知る所、彼は作品をリリースする度に楽曲のストックを全て破棄して新たな楽曲を紡ぎ出しているということを聞いていたからだ。それなのに、だ。何故だ。何故このタイミングなのだろうかと思いつつ。この楽曲に耳を傾ける。
 なんとも。いや、これは。そんな四方山話なんか関係なく、この『OZ』というアルバムの終わりを告げようとしている場面になんの違和感もなく溶け込んでいる。

 “見たかったのはこのゴールなんかより、これほどの僕らなんだ。”

 時を超え流れ出すメロディー。まさにこの言葉、100sが精根尽き果てるまで『OZ』を創り上げたことに対する明確な答えとして響いてくる。

 “旅の終わりには幕が閉じるけれども、時の続きに君はいる”

 “さようなら、またあした”

 このリフレイン。徐々に厚みを増して行くコーラスによるリフレイン。素晴らしきかな音楽。100s。『OZ』。