9. Sonata
イントロから鳴り響く池田貴史のピアノのが全編に渡ってループする。そして、ギターにしろベースにしろメロディーにしろ、全ての音塊が揺れて揺れて揺れまくる楽曲。途中ブレイクする部分もあるにはあるが。曲後半の拍子が食い込むところで、さらに揺れる。こういう楽曲を産み出してしまうことが100sのマジックなのだ。「A」同様、とても奇妙な曲であり、捕らえ所が無く、何かをモチーフにしてこの楽曲を語るのは非常に難しい。タイトルの示す通り、「これは100sによって新たに発明された奏鳴曲である」と言い切って片付けてしまっては如何なものか。
歌詞にいたっても思考を放棄させるような物語りが羅列されまくっている。まさに、“脳内、「ヘッド・オブ・スピーダー」。”なのだ。“ソング・オブ・フリー”という、「B.O.K」にて唄われた言葉が脳内をぐるぐるとリフレインしてくる。物凄い早さでぐるぐると廻るような感覚。
不安になる。とても不安になる楽曲だ、これは。狂気じみた楽曲という風に書いてしまってもいいのかも知れない。足下が覚束なくなる。空を、宇宙を浮遊するというよりも、まさに自分の存在する場所、身体、五感全てが正常に機能しているのか?という恐怖に駆られる。ようは、現実と夢の狭間、白昼夢をみているかのような感覚。僕はどこにいる?君はどこにいった?僕は誰?あなたは誰?…。
起承転結、そこまではっきりとしているとまでは言わずとも、中村一義、100sの楽曲は1つの楽曲においてある程度の帰結点を見い出すことが出来たのだが、これほど聴き手を悩ませ、突き放す楽曲はいままでなかったといっても過言では無い。しつこいようだがこれは本当に異質な音楽だ。だが、『OZ』というアルバムを完成型に仕上げるにはどうしても欠かせない楽曲なのだろうと。これはアルバムを通して聴くと納得させられる。