2. A

 “1、2、3!”

 ギタリスト小野眞一の掛け声とともにはじまる、類を見ないほどの摩訶不思議なロックンロール。絶妙な間で鳴らされる、町田昌弘と小野眞一とのギターのカッティングの攻防。それを後ろからぐいぐいひっぱる山口寛雄のベースライン。彩り溢れる音階で楽曲を煌めかせる池田貴史のオルガン&シンセ。すべての音をタイトに、ラウドに響かせるために叩き出される玉田豊夢のドラム。そして、今まで以上に聴きづらい歌詞を載せて万感の想いを込めてメロディーを紡ぎ出す中村一義のヴォーカリゼイション。「ロックとは発明である」という言葉があるがまさにそれが当てはまる楽曲。所謂、ギターロックバンドとしてここまで異質なものを突き付けることが出来るというだけでも100sのポテンシャルの素晴らしさに完敗。先行シングルとして発売された時は、様々な場所で異論反論を巻き起こしたのも彼等の確信犯的行為。歌詞を敢えて公表せずにみんなに聴き書きをさせたのもある意味彼等の確信犯的行為。それは悪い意味では無く、来るべき『OZ』というアルバムはとんでもないものなんだぜ、というものをこの曲を先行シングルで発売した行為として僕達に突き付けていたのだ。故にそれは、『OZ』というものが本当に破格の大作になるんだということを自らに突き付けていたということにも繋がる。そう、不安と期待が聴き手の僕らに介在していたもとの同じものが彼等の中にリアルタイムに介在していたということ。そして、ロックでもありロールもしているこの楽曲は、中村一義のデビューシングル『犬と猫』の衝撃にも近いものがある。あまりにも音楽が溢れ帰ってしまった今、これに気付く者はどれだけいるか。

 “だろ、だろ?だろ、なぁ、みんな。”

 このサビのリフレインにどれだけ僕らは答えられるのか。

※100s 1stシングル「A」発売時のレビューを読みたい方はこちらに寄り道して下さい。