7. 銀河鉄道より(対 ベートーベン交響曲第七番)

 『流れるものに』の最後に流れる汽笛の音から流れ出るは、この、『銀河鉄道より』。

 突如、イントロから流れ出る音色は、バグパイプ。誰もが一度は耳にしたことがあるはずの音色。スコットランドの伝統音楽。

 唐突ではあるが、ここで、音楽の歴史の時空を一気に遡って語ってみようと思う。

 中村一義が愛して止まないビートルズ。彼等はロックンロール・バンドとして初めて世界的にポピュラー・ミュージックの世界で成功したバンドだ。そのポピュラー・ミュージックはなんなのかというと、古くからあるクラシックや民族音楽が融合し、その音楽が商業的に成立したものを指す。となると、ルーツはクラシックでもあり、民族音楽でもある。ということは、クラシックは、この作品で言うところのベートーベンである。そして、一方の民族音楽として、その一部として彼はこの曲の冒頭にバグパイプを鳴らしたのだ。あらゆる音楽の、ロックの、ロックンロールの影響の欠片を、彼なりに、総体的にまとめ上げたということだ。

 さらに、『銀河鉄道より』というタイトルからして、宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』を彷彿せずにはいられない。『黒男』における、手塚治虫からの影響と共に、彼は、宮沢賢治からも影響を受けたことを語っていたことがある。さらに妄想を広げてみると、ゴダイゴの『銀河鉄道999』さえも想像してしまう自分がいる。あらゆる角度から観て、先の音楽の歴史と共に、様々な思想も含めた、彼としての影響要素が多分に詰め込まれているのである。

 これらの情報も重要だが、何よりも、この楽曲の秀逸さに言及したい気持ちが止まらない。一聴してすぐに想い出されたのは、3rdアルバム『ERA』収録の「君ノ声」だ。さらに、さらに、ベートーベンの弦楽器の旋律が絡みつく様は、2ndアルバム『太陽』収録の「生きている」さえも彷彿させるものとなっている。彼の過去曲を知っている人からすると、この時点でとてつもなくメロウであり、哀愁に満ち溢れた楽曲であろうと想像出来るだろう。まさに、その通りだ。中村一義が得意とする、珠玉のポップス。完膚なきメロディで、沢山のポジティビティを眩しすぎるくらいに解き放つ。そんな楽曲に、歌詞に溢れる言葉達は、“光”、“闇”、“愛”、“希望”、“笑顔”、“涙”、“唄”、“心”だ…。 

 “君は僕の心にいる。僕は君のそう、心に。”

 過去にあったあの時の、あの心を想い出そう。

 “もう君は、目の前にいないけど、また今日、僕は君と唄えるだろ?”

 そう。いつでも。いつまでも。今ある心の存在を噛み締めよう。

 『銀河鉄道より』から溢れ出す想いを感じながら…。

 

8. 愛すべき天使たちへ(対 ベートーベン交響曲第八番)