Bonus Track. 僕らにできて、したいこと - Live at 100st. 2011/06/23 -
(対 ベートーベンピアノソナタ第八番「悲愴」)

 ボーナストラックとして収録されたこの楽曲は、かの「3.11」が起こった後に創られた楽曲である。彼のサイト、『KIKA:GAKU』にて震災の義援金を募ることになり、その名が、『The Test For Lives 僕らにできて、したいこと』であった。そこから派生した沢山の想いがこの楽曲を産み出すきっかけになったということである。映像作品として、現在もサイトにて発売されている『誕生也』にもすでに収録されており、個人的な初見はそれであった。

 ピアノに向かってこの楽曲を演奏する中村一義の姿は、とてつもなく悲哀に満ちていて、まさに「悲愴」ともいえる演奏で。でもそこで歌われる想いの強さは鎮魂歌のような聖なる響きが在った。改めてこのアルバムの最後に収録されている形で聴いても、その情景と、自分の心に染み渡った感情は変わらない。

 100s名義のアルバム『OZ』収録の「いきるもの」の歌詞を自ら再び引用したフレーズが象徴的であり、タイトルが示す通り、できること、したいこと。心の底から その想いが、溢れている。

 “『忘れない』を忘れずに。”

 音楽で何ができるのか?

 それが、『対音楽』というアルバムの答えの一つである。

 僕らに何ができるのか?

 それさえも、この『対音楽』というアルバムの答えの一つでもある。

 音楽以外の沢山の答えさえも導き出すべく、真摯に音楽に対峙した作品。

 それが、この、中村一義の『対音楽』なのだ。