現在は保坂壮彦日記にて随時様々な音楽をレコメンドしています。

さらに、毎月、「MUSICA」を主とする媒体にレビューを寄稿中。

 

 

100s「OZ」のレビューはこちら

 

過去の保坂壮彦のdisk reviewはこちら

 

(0018)

bonobos「あ、うん」

 bonobosから流れ出す音楽の心地よい波動はいつだって愛おしい。ただただビートに身を委ね、浮遊間のあるメロディーと、曇りなきポジティヴィティ溢れる歌詞を感じ取るだけで、日常の生に対する希望というものが自然と心と身体全体に染み渡ってくる-----そんな彼らにとって3枚目のフル・アルバムは、そういった彼ら独自の音楽性をより強靱にし、ビルドアップさせた作品に仕上がっている。ホーンセクションやストリングスの響き、それと所々で鳴らされる電子音の巧みさの妙が秀逸であるのと、それぞれの楽曲構成のバラエティの豊かさに彼らの本気度が伝わってくる。これは確実に彼らが辺境の地でひっそりと咲く花として存在し続けることを拒み、より大衆に向けて、ポップ・ミュージックの世界に飛び込んできた意欲作として僕らに届けんとしているが故の結果であり、不穏な時代に降り注ぐ音楽の魔法が僕らの側にそっと寄り添ってきたということだ。

----------------------------------------------------------------------------------

(0017)

PRIMAL SCREAM「RIOT CITY BLUES」

 ここ数年、エレクトロニックなアルバムをリリースし続けていた彼らが突然変異。かの『Give Out〜』を彷彿させるかのようなロックンロール・チューン満載のアルバムを完成させた。しかし、アルバム全体を通して聴くと『Give Out〜』のようなメンフィス、ブルース回帰的な刹那さはほとんど皆無。ロックンロールの発祥となったブルースのもう一方の側面、カントリー・ミュージックからの影響が強く、まるで60年代の呪縛から解き放たれたローリング・ストーンズの70年代期の音色にも近い。常に、社会と個人の軋轢の中から聴き手を惑わせるアルバムをリリースし続けてきた彼らが今回このアルバムで表現したのがこれなのだ。彼らへの解釈や愛情は個々千差万別だろうが、このアルバムを聴いて、“最高のロックンロール・アルバムだ!”と言わずしてなんと表現しようか。

----------------------------------------------------------------------------------

(0016)

BEN thinks Little of Sneakers / module
VOXOV RECORDS (VRCSJ-1045)
(official site)

 時代の潮流に左右されず、ジャズやブルースやファンクやソウルの純粋なルーツ・ミュージックを独自に咀嚼して、類い稀なるテクニックで、新たなベクトルで素晴らしき音楽を表現し得るアーティストが誕生したのだ。それが、平均年齢22.5歳という驚愕の4人組のバンドである、このBEN thinks little of sneakersだ。

 (レビューを全部読みたい方はこちらへ)

 

----------------------------------------------------------------------------------

(0015)

The Ordinary Boys「Brassbound 」
ワーナーミュージック・ジャパン
(official site)

 The Ordinary Boysが1stアルバムから1年後という短期間で2ndアルバム「Brassbound(ブラスバウンド)」をリリースした。驚愕。これほどまでに性急に突っ走るとは思っていなかったし、そして、もし突っ走ってしまったら短期間で失速してしまうのでは?という不安もあったからだ。が。そんないらぬ心配はアルバムを聴いて全て吹っ飛んだ。これが2ndアルバム?あり得ない。1年間でこれだけ成長したのか?あり得ない。それほどまでに強烈なアルバムになっている。
 さて、内容はというと、先行シングル「Boys Will Be Boys」で垣間見せた、現代版2トーン・スカなナンバーから予想していた通り、アルバム全編に渡っての通低音は彼等のルーツ・オブ・ルーツであるレゲエ/スカ。しかしそれだけじゃぁこのアルバムを語るに値しない。単純にスペシャルズやマッドネスといった2トーン・スカのそれだけではないし、確かにクラッシュでもあるしエルヴィス・コステロでもあるけど、彼等とは違った角度でレゲエ/スカを吸収し発している。そして英国という場から産まれだした様々な素晴らしきアーティスト、ビートルズまで遡っても言い過ぎじゃない、そのような先人達のエッセンスを彼等なりにちりばめている。特に、メロディーだ。メロディーのこの際立ち方は予想だにしなかった。確かに1stアルバム収録曲「Maybe Someday」のようなモッズな、ジャムな楽曲に心奪われた身としては彼等のソングライティング力というものを肌身に感じていたが、ここまでクオリティの高い楽曲を作り上げることができるなんて。だって、これ、アルバム全曲シングルカットしてもいいぐらいだよ。
 しかし、確かに、アルバム先行曲「Boys Will Be Boys」はダントツに最高だ。2トーン・スカというジャンルにカテゴライズされたバンドが醸し出す楽曲とは一味も二味も違う。それに対するリスペクトという名目を残しつつも、曲間に挟まれるダンスホール・レゲエなラガ・マフィンや、メロディーの際立ちは、彼等にしかなし得ない素晴らしきもの。しかしその他の楽曲もそれにひけをとらない。特に秀逸なのは「Call To Arms」か。深遠なるストリングスが鳴り響き、乾いたギターのカッティングとヴォーカルのサム・プレストンの唾を吐きかけるかのような唄声からはじまるこの楽曲。曲途中からホーン・セクションまでもが鳴りはじめる。そして楽曲の最後は、もしこの曲がライブで演奏されたら、オーディエンスがプレストンと一緒に必ず大合唱するであろう的なシングガロングな掛け声が…。まあとにかく、勿論、くどいようだがメロディーは秀逸で、プラスアルファ、言いたいことがあってね。この楽曲の歌詞に僕はメロメロになってしまうのですよ。
「But one for all we will never fumble, We'll take a tumble, in the rumble, But all for one we will never crumble.」
(「1人はみんなのために」 へまはしないぜ 足をすくわれても争うのさ 「みんなは1人のために」 滅びやしない)
 「fumble」「tumbl」「rumbl」「crumbl」という韻の踏み方もかなり粋なんだけど、日本語訳ね。歌詞の意味ね。泣けるぜよ。
「We can fight and get it right、Bumping in the ruck is not a pretty sight, In the name of peace love and unity.」
(戦い抜けるさ 白黒つけることもできる みんなでもがいて 少しぐらいかっこ悪くても ピース、ラヴ&ユニティーの名のもとに)
 ちきしょう。むかつくぐらいかっこいい。ここに引用した歌詞だけではなく、この楽曲には様々な彼等の、音楽活動におけるアティテュードが詰め込まれている。無論、この楽曲以外にも、ね。1stアルバムにおける政治的アティテュードから少し、人間の内面的なもの、日常の心模様を表現している度合いが高くなっている。だからこそ届く。僕に。
 とにかく、歌詞も凄いのだが、メジャーコードだろうがマイナーコードだろうがなんだろうが、どんなコード構成で楽曲が構成されていようが、聴いている自分の心が高揚する楽曲が詰め込まれているところが素晴らしくね。みなさん、国内盤を是非購入して下さいね。たまには洋楽のアルバムも国内盤を購入して歌詞を噛み締めて下さいね。それにこのアルバムにはボーナストラックで、The Ramonesの「KKK Took My Baby Away]のカバーが収録ですよ!こりゃぁ、DJ保坂としては当分の間、かなりの頻度でスピンしまくるナンバーになること必至ですわ。

(2005-06-23 00:26 保坂壮彦日記から抜粋)

----------------------------------------------------------------------------------

(0014)


UNITED STATE OF ELECTRONICA / UNITED STATE OF ELECTRONICA
インディペンデントレーベル
official site

 The Go! Team同様、90年代に置き忘れた何かがこのバンドに宿っている。一聴しただけだとダフト・パンクの生バンドヴァージョン! ファットボーイ・スリムが好きな人もいける! などなどで括られて、単なる一発屋というカテゴリーに押さえ込まれてしまう感があるけれど、違うんだってば! これ。そう、久しぶりに最近、アレステッド・デベロップメントのアンプラグドのライブをDVDで見たんだけど、すげー良い。ビッグバンド! しかも生演奏! 男女入り交じり! ってな感じでね。で、知っている人は知っている、90年代後半にちょっとブレイクしたオーストラリアのSwoopというバンド(『Woxo Principle 』というアルバムが最高。もう廃盤らしいが。そういえば来日した時の前座を務めたのがデビューしたての頃のスーパーバタードッグだったのだ)をも連想させるビッグバンド(ようは人数が多くておもろい)というかんじなのさ。とにかく聴いてて楽しい。踊れる。原初的な快楽をくすぐられる。ポップミュージックのフィールドで今までにないものを求められていた時代、90年代に“知らんそんなもん。音楽は楽しければいいのだ!”とシニシズム、ニヒリズムがちょいと入りながらもばか騒ぎシーンを築き上げたビッグビートのあの感覚がこのアルバムには込められている。故に、やれロックンロールリヴァイバルだののDFAを中心とするエレクトラクラッシュ的な要素も無きにしもあらずだけどそんな脈絡には入れたく無い。
 世紀をまたぐ前には予想もつかなかった21世紀という時代。いつのまにかもう3年も経ってしまった。“すべては出尽くしてしまった”というポップミュージック的な解釈ももう聞き飽きたし、言うべく要素が無い。音楽は過去も未来も超えて行くものだから。ね。

----------------------------------------------------------------------------------

(0014)


The Go! Team / Thunder, Lightning, Strike
VMSD-003
\2300(tax out)
♪ VROOM SOUND RECORDS OFFISIALSITE ♪

 オルタナティヴという言葉が何を意味していたのか? ベックを筆頭とする90年代のエクレクティック(折衷主義)をざっくばらんに開陳していた良き時代は何故に時代とともに追いやられてしまったのだろうか? そんな刹那的な感傷的な思考がいつも僕の頭の隅っこに巣食っていたのは確か。「何でもあり!」という音楽的手法が「何でもあり!」という音楽にカテゴライズされて沙汰されて時代に埋もれて行った過去への罪状をいつか誰かが突き付けてくれると期待していた。そこに表れたのがこのThe Go! Teamである。「UK発、イアン・パートンによるグルーヴィー・プロジェクト『The Go! Team』待望の1stアルバム。60'sポップからオールドスクール、ソウル、パンク、モッズ、アイリッシュ、オルタナなどをゴッタ煮にしたようなファンキーでパンキッシュなフレッシュ・グルーヴィー・サウンドのオンパレード」。こう評される彼等の音楽はまさに万華鏡グルーヴ。アナログな音質が飛び散る中でデジタルなカットアップ&サンプリングが吸い込まれる。まだまだ得体の知れないこの6人組から飛び出る音像は全ての時代のパーティーミュージックに詰め込まれたアッパーフィーリングが満載。「楽しく無ければ音楽じゃない!」ということを改めて感じる今日この頃。肩肘張って、眉間にシワを寄せて、部屋の隅っこで聴く音楽だって音楽だけど、ジュニア・シニアが魅せてくれるあのフィーリングを、FUN!FUN!FUN!なフィーリングを忘却の彼方に置き忘れないようにさせてくれるアルバムだ。「なんだ、音楽ってやっぱこんなに楽しいもんなんだ!」と聴いた後に笑顔になる、自然と身体が疼き出す。過剰なプロダクションが無いだけに、日々のパーティーソングとして、部屋でも街でもどこででも僕の心をアップリフティングしてくれる最高のバンドが表れた。やっぱ「楽しく無ければ音楽じゃない」よ!

 

-----------------------------------------------------------------------------------

(0015)


U2「ハウ・トゥ・ディスマントル・アン・アトミック・ボム」(DVD付 初回限定盤) [LIMITED EDITION]
ユニバーサルミュージック ¥3,500(税込)


R.E.M「Around The Sun 」
ワーナーミュージック・ジャパン ¥2,520
(税込)


MANIC STREET PREACHERS「Lifeblood」
ソニーミュージックエンタテインメント ¥2,520
(税込)

 U2のニューアルバム「ハウ・トゥ・ディスマントル・アン・アトミック・ボム」。タイトルを和訳すると「核爆弾の解体方法」。iPodのCMまでにも飛び込んで行った先行シングルの「Vertigo」のあの感じ。最初に突き刺さるのはロックンロールの「激しさ」だ。でもアルバム全編を通して聴くと、激しくも、暖かく、切ない。僕にとってU2はポップミュージック界における憧れの兄貴である。全ての行動に感化される重要な兄貴。でも、憧れているが故にたまに盲目的に信仰してしまうんだけど。

 R.E.Mのニューアルバム「Around The Sun 」。タイトルを和訳すると「太陽のまわりで」。タイトルトラックでもあるアルバム最終収録曲「Around The Sun 」の歌詞、“太陽を 太陽を 太陽を 夢を自由に羽ばたかせて 信じて 信じて 今を今を今を今を今を今を”のフレーズのこの感じ。最終的に突き刺さるのはロックンロールの「暖かさ」だ。でもアルバム全編を通して聴くと、暖かくも、切なく、激しい。僕にとってR.E.Mはポップミュージック界における年上の従兄弟である。ちょっとした距離があるけど全ての行動に興味を持たされる年上の従兄弟である。でも、距離があるということを意識しすぎて本質を掴みとることが出来なくなることがあるんだけど。

 MANIC STREET PREACHERSのニューアルバム「Lifeblood」。タイトルを和訳すると「生命を支えるもの、命の源」。アルバム収録曲1発目「1985」の意味深なタイトルが通低音に流れ、日本盤ボーナストラックに収録されている「THE SOULMAETES」の歌詞、“想い出もなく-調和する音色もなく-お互いへの 思いやりすらない 心の友なんて/心の友なんて/心の友なんて そんなもの”のフレーズのその感じ。どこを切り取っても突き刺さるのはロックンロールの「切なさ」だ。でもアルバム全編を通して聴くと、切なくとも、激しく、暖かい。僕にとってMANIC STREET PREACHERSはポップミュージック界における悪友である。まったくしょうがねーなぁーと思いながらも結局どこかで繋がってしまう悪友である。でも、悪友だけに批判的になったり、“大丈夫かい?”なんていう馴れ合いの言葉を投げかけたりしてしまうことがあるんだけど。

 こんな妄想癖を許してもらえるリスナーという立場ってとても素敵だ。

 だから僕はポップミュージックを聴くことをやめられない。

 創り手と共に同じ時代を歩む人間として、僕はポップミュージックを聴き続ける。

 そして自分で自分の選択肢でポップミュージックの本質を取捨選択する。

 結果、自分の時代を刻む軌跡を歩む。

 気軽に古き良き時代の音楽も溢れ返っている時代だからこそあえて僕はポップミュージックを聴く。

 リアルタイムのポップミュージックを聴く重要性を感じ取る。

※上記した3アーティストのアルバムを購入したいと思ってしまったのならば、是非とも国内盤を買って下さい。歌詞を噛み締めて聴いてもらいたいのです。僕みたいな英語に堪能でない人はなおさらです。洋楽って歌詞がダイレクトに伝わらないから好きになれないって思っている人ならばなおさらなおさらこれを気にお願いします。さらに、彼等のデビュー以来の音楽活動の軌跡の知識を知らない人はなおさらです。音楽に余計な知識は必要ないかもしれませんが、「無知は知なり」なんていう言葉もありますが、3アーティストとも、このタイミングで最高傑作をリリースした!ということも含めて是非とも財布の紐を弛めて、今こそ彼等の歴史を振り返るべき!という意味も込めて国内盤を買うことをお勧めします。はい。3枚ともCCCDではないという素晴らしき偶然を含めてのお勧めなのです。

 (保坂壮彦日記 2004年11/21から抜粋)

------------------------------------------------------------------------------------

 

(0014)

100s 「Honeycom. ware / B.O.K」
TOCT4783 ¥1,050

100s official site

100s /「Honeycom. ware / B.O.K」のrecommend review はこちら